白石正人句集「わかめご飯の素」から、「秋 autumn」。
落蝉の鳴きつくしたる軽さかな
蜩や日のあるうちに終るバス
鰯雲どこに行くにも草履かな
虫売りの虫の音だけくださいな
発掘の土戻しゐる残暑かな
二等星三等星や揚花火
人は皆死ぬと言ふけど木歩の忌
ジーンズを裏返し干す野分晴
踊り場の小さき扉九月尽
曼珠沙華億萬本の夕間暮れ (巾着田、と前書きあり)
鷹二つ天覧山の天高し
しきしまは終の栖ぞ鷹渡る
月光を浴びたくなれば寝返れり
ゑのころを小旗のやうに振つてゐる
案山子らの振向いてゐるかも知れぬ
金色の仁王の乳首夕立後
あらはなる耳うつくしく秋日さす
菊膾あたり暮色となりにけり
(つづく)