綴じ込みページ 猫-157

 白石正人句集「わかめご飯の素」から、「秋 autumn」。


    落蝉の鳴きつくしたる軽さかな
    蜩や日のあるうちに終るバス
    鰯雲どこに行くにも草履かな
    虫売りの虫の音だけくださいな
    発掘の土戻しゐる残暑かな
    二等星三等星や揚花火
    人は皆死ぬと言ふけど木歩の忌
    ジーンズを裏返し干す野分晴
    踊り場の小さき扉九月尽
    曼珠沙華億萬本の夕間暮れ  (巾着田、と前書きあり)
    鷹二つ天覧山の天高し
    しきしまは終の栖ぞ鷹渡る
    月光を浴びたくなれば寝返れり
    ゑのころを小旗のやうに振つてゐる
    案山子らの振向いてゐるかも知れぬ
    金色の仁王の乳首夕立後
    あらはなる耳うつくしく秋日さす
    菊膾あたり暮色となりにけり
 

(つづく)