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 白石正人句集「わかめご飯の素」(「秋 autumn」)のつづき。 


  
    栗の毬硬し祭礼始まれり
    吾亦紅代役の子の颯爽と
    栗の木の下に糞あり鹿の秋
    口笛を吹けぬ少年赤まんま
    黒葡萄目玉のやうな重さかな
    軒下の古提灯や今年酒
    二人ゐて素直になれる櫟の実
    秋の水代はりばんこに手をつける
    むささびの穴の二つや秋の風
    十月やチラシの間取り見くらべる
    十月やボタンで開く青梅線
    レモンひとつ籠にいれたる男かな
    小鳥来る童話のならぶ古書の市
    新刊に鼻が近づく書肆の秋
    巻末に忌日一覧つづれさせ
    爽やかや幼なが幼な励ませり
    爽やかや二人の耳の聡くあれ
    野紺菊ゆらし優しき人となる
    引率のブラウス美しき秋桜
    釣舟草たをりて足のゆらぎけり
    ドリームカムトゥルー翌あるべし柿の空  (翌は、あした)
    

(つづく)