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 白石正人句集「わかめご飯の素」から、いよいよ「冬 winter」。


    神無月山から鶲やつて来て  (鶲:ひたき)
    水鳥に水門開く冬運河
    オリオンや鉱石ラヂオからザザザ
    牛鍋を唄ひたくなるまで喰らふ
    鰭酒や恋は強火であぶるべし
    海鼠から海鼠うまるる夜の生簀  
    冬日向紙ヒコーキを展げみる
    モード誌に俳句特集風邪心地
    しづしづとマスクとる顔見てしまふ
    時雨るるやとむらひの花運ばれて
    侘助やこのたびのこと忘れたく
    朗読の空は真青や一葉忌
    坂道や芯まで冬となりにけり
    冬ざれや瓦礫のごとき骨董屋
    短日や骨董通りでは買はず
    外套を脱ぐ暇もなく断らる
    要らんこと頼まれて来し年用意
    階段に本棚のある年の暮
   

(つづく)