綴じ込みページ 猫-159
白石正人句集「わかめご飯の素」から、いよいよ「冬 winter」。
神無月山から鶲やつて来て (鶲:ひたき)
水鳥に水門開く冬運河
オリオンや鉱石ラヂオからザザザ
牛鍋を唄ひたくなるまで喰らふ
鰭酒や恋は強火であぶるべし
海鼠から海鼠うまるる夜の生簀
冬日向紙ヒコーキを展げみる
モード誌に俳句特集風邪心地
しづしづとマスクとる顔見てしまふ
時雨るるやとむらひの花運ばれて
侘助やこのたびのこと忘れたく
朗読の空は真青や一葉忌
坂道や芯まで冬となりにけり
冬ざれや瓦礫のごとき骨董屋
短日や骨董通りでは買はず
外套を脱ぐ暇もなく断らる
要らんこと頼まれて来し年用意
階段に本棚のある年の暮
(つづく)