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「国文法ちかみち」という本が本棚にある。ぼくが受験生の頃に使った参考書である。著者は、小西甚一。出版社は、洛陽社。もう一冊、同じく小西の「古文研究法」が並んでいる。どちらも昭和四十三年の発行で、「国文法ちかみち」は重版定価300円、「古文研究法」は改訂23版定価400円とある。


 ぼくは、国文科志望だったのに、最初の大学は法学部法律学科、二度目の大学は教育学科に籍を置くことになった。何度受けても国文科(青学では日本文学科)に受からなかったからである。
 わざわざ、置いた、と断わるのは、どちらも四年間在籍しながら卒業しなかったからであって、しかも最初の大学は授業料滞納で抹籍となった。もっとも、つぎの大学に入学が決まったのに、わざわざ未納分の学費を支払って「中退」の資格を得るバカもいないだろう。二度目の大学は、一年目の夏休みまで通って、あとは四年間一回も授業に出なかった。しかし、こちらはレッキとした中退である。都合八年間、ムダに大学生活を送った勘定になる。


 ドラマ「HERO」の久利生公平君は、高校中退で大検に合格し、司法試験に合格して検事になったのだそうだが、正式には中卒ということになる。たとえば国勢調査の回答欄には、中退という項目がなく、シビアに中卒、高卒と記入するようになっていて、ドラマのなかで、おれ、最終学歴、中卒ですから、と久利生君はさらりといっているが、じつにエライものである。


「国文法ちかみち」から横道にはいりこんで、えらく遠まわりをしてしまった。ぼくは、この本のオマケの部分、「〈余論〉表記法のはなし」の話をするつもりだったのに。
(つづく)