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 小西甚一「国文法ちかみち」のオマケ「〈余論〉表記法のはなし」の最初に掲げられた「(一)古代特殊仮名づかい」は、国文学をこころざしたり、古代語で書かれた文献を解釈しようとする人には必需品だが、せいぜい俳句を読んだりこしらえたりするのには、無用の長物である。都心に近い渓谷を散策するのに、アルプスに登るほどの装備が必要ないのといっしょである。


 で、割愛はするけれど、誤植がひとつあるので、そこだけ指摘しておきたい。忘れていたが、鉛筆で棒を引いて修正してあったのに気がついた。もっとも、ぼくの本は昭和四十三年発行だから、とっくのむかしに訂正されているかもしれないが。


 322ページに、「つまり、連用形と終止形にあらわれるのは、かならず甲類の音であり、已然形はかならず乙類ということになる。」と書かれているが、「終止形」とあるのは「命令形」の誤りである。
(つづく)