綴じ込みページ 猫-187
平久井、泥谷、利根山。これは、いずれも姓である。ここ二週間のあいだに、たてつづけに遭遇した苗字だが、利根山に関してはぼくの母方の姓だからはじめてというわけではない。
平久井、ひらくいさん。会社の複合コピー機のメンテナンスにみえて、名刺を交換した。ふりがながなくて読めなかった。早速、インターネットで調べてみると、ひらくい、と読ませることがわかった。
平久井さんに、めずらしいお名前ですね、と声をかけると、そうなんです、実家は栃木県矢板市なんですけど、親戚以外ではこの姓の人に会ったことがありません、と答えた。
インターネットでは、もうひとつおまけに、この苗字の人が全国でどれくらいいるかも教えてくれた。およそ300人、である。
同じ頃、オークションで靴を落札した。ぼくにはサイズが小さいかもしれなかったが、最近の007映画で主人公が履いている靴メーカーのもので、定価で購入するのは無理な靴なので、ダメ元で入札した。しかし、安いといっても007が履く靴である。失敗すれば、当分は霞を食べて暮らさなくてはならない。
このオークションの出品者が、福岡の泥谷さんだった。ひじや、と読む。こちらもインターネットで調べると、全国でおよそ1500人とのことだった。
ついでに母の旧姓で調べてみた。これも、親戚以外に会ったことがない苗字で、昔、正月に、従兄弟が東京都の電話帳で名前を調べてみたら、利根山光人という人にぶつかった。それで、酔った勢いで電話して、どっちが本家だ、とやりあった。こんど、ゆっくり会って飲もう、と約束したが、果たさないうちに利根山光人先生はなくなられた。
利根山は、とねやま。全国でおよそ70名、というから驚いた。灯台下暗し。身近に絶滅危惧姓があったとは。女系の家系で、子どもは生まれても、結婚して姓が変わってしまうから、加速度がついて絶滅にむかっている。
ちなみに、わが家のミーヤは、猫の名前のベスト100にも入らないところをみると、やっぱり消えてゆく名前なのだろうか。