綴じ込みページ 猫-219

 まとまった休みがとれて、ふだんおろそかにしている事柄を、この際ぜんぶ片づけてやろうとおもった。が、おもっただけで、なにもラチがあかなかった。


 ひとつには、猫のミーヤがずっとへばりついて離れないからで、おまえは犬か、といってやりたい。世の中の母親の気持がよくわかる。なるほど、ゆっくりおちおちと自分の時間なんか気にしていられなくなるのだ。


 それなら、猫と別々の部屋にいればいいじゃないか、とおもわれるかもしれない。たいてい、そうおもうでしょうね。しかしですよ、ミーヤはぼくが家のどこかにいるとちゃんとわかっているんですね、お利口だから。で、一所懸命ぼくを呼ぶんですよ。パパー、いるんでしょ。だったらミーヤのとこ来てー。


 これで知らん顔できたら、猫なんか飼わないほうがいい。はいはい、といってすぐに二階からおりてきちゃう。あれ、ミーヤいたんだ、とかなんとかいいながら部屋に入ると、ミーヤは足にスリスリしてきて、もうパパはだめになっちゃうぞ。


 というわけで、読もうとおもっていた「高柳重信全集」(立風書房・昭和六十年刊・全三巻)は、残念ながらおあずけとなった。