綴じ込みページ 猫-247

    桜のしべ降る猫は寝てゐる 飛行船


 この句をつくったのは、数年前のことである。季語と字数にうるさいいて丁さんは、「桜蕊降る」でなくてはいけないし、十七音を満たしていないのは問題だね、といった。ぼくは、山本健吉編の「最新俳句歳時記(春)」を参照していたので、「桜の蕊降る」でもよいことは承知していたが、調子を重んじるあまり字数を省略したことは反省した。反省はしたけれど、はいはい、と軽い返事をしただけで、素直に訂正しはしなかった。自分でも困った性格だとおもう。


 その後、句集の上梓を考えたとき、この句がどうしても捨てがたく、つぎのように直してみた。


    桜の蕊降る三毛猫は寝てゐる


 これで十七音になった。しかし、なんとなく胸にストンと落ちてこない。一事が万事これだから、薄っぺらな冊子程度の句集をまとめるのに、おもいのほか手間取っている。出版社を紹介されてから、もうじき一年経つ。本当に困ったものである。
(つづく)