大木あまり共著句集「猫二〇〇句」『夏』

 夏    青猫忌


猫の耳は切符の固さ夏に入る
我が猫に少年期あり柿の花
青梅を猫がころがし世紀末
猫怒る寺山修司の忌なりけり
白く咲く鉄線猫の地獄耳
ずぶ濡れの猫茴香の花の前 (ういきょう)
ひまはりに八つ当たりしてからす猫
世界に火つけんと猫の尻つぽかな
猫好きに酒は辛口月見草
猫の大学あれば入りたし白日傘
闘へと炎天に猫出しにけり
聖堂に猫の鈴の音して涼し
猫の出口死者の窓ほど西日かな
顔舐めて横浜の猫夏祓 (なつばらえ)
君のいびきいやがる猫と蚊遣豚 (かやりぶた)
青猫忌とはわが忌日夏の雨 (そうびょうき)
のうぜんに猫のあかるき肛門よ
猫の辺にしばし弾みて蜥蜴の尾
奈良盆地猫も歩かぬ暑さかな
島を出ぬ猫に卯の花腐しかな
水無月の大き魚拓の下に猫
牛舎より猫の声して夏薊
猫にうまれて幸せですか花ざぼん
片蔭は柩の幅や猫歩く
雷と猫相性悪き鞍馬かな
猫愛すために生まれし夏帽子