大木あまり共著句集「猫二〇〇句」『秋』

 秋    葡萄の闇


猫の仮面つけて月夜に契るかな
猫撫でて水の都の秋深し
波音にかこまれ猫の眠る秋
猫走る月のひかりの石畳
露けさの猫抱き聖女くづれかな
台風のそれてぴいんと猫の髭
猫の餌君に持たせて月の町
猫の傷口月光さへも痛からん
秋風の猫がよぎるやカフェテラス
白猫を丸ごと洗ふ虫の闇
抱き疲れとはかなかなの畳かな (愛猫に)
泥んこの猫の毛洗ふモンロー忌
猫の鈴つけかへてゐし生身魂 (いきみたま)
芋の露やさしくなりて死が近し (愛猫に)
猫たちとミルクわけあひ夜業かな
草の穂や思ひつめたる猫の顔
背のびして猫満月に入るごとし
雲となり君を追ひたし猫じやらし
猫へ急く十月の野の水たまり
重くるしき葡萄の闇や猫の声
口笛の猫誘ひをる穂草かな
いま君は猫抱きをらん十三夜
乱暴にあつかふも愛露の猫
黒猫の爪とぐ月の木なりけり
朝顔や三ノ輪の猫のこぎれいに
水あれば猫を映して竹の春
町なかの猫の駆け込み寺も露