大木あまり共著句集「猫二〇〇句」『冬/新年』

 冬/新年    夢の入口


水仙猫は狩の眼してゐたり
冬靄の猫の喉より潮騒
雪が雪追ふ犬ホテル猫ホテル
極月の猫を走らす長渚
猫抱いて夢の入口さがす冬
捨て猫に青く灯れる聖樹かな
汝は猫科寒い吾は霊長目ヒト科 (な/わ)
猫にくる葉書一枚石蕗の花 (つわ)
着ぶくれて恋する猫を追ふばかり
粉雪や夜更ししたる夫と猫 (つま)
黒猫に縄張りありて厚氷
仏壇に猫の手が伸び返り花
眠りては覚めては雪の猫の声
亡き猫を恋ふ雪の夜のカフェオレ
猫眠亭と名付けてよりの朴落葉
雪踏んで光源氏の猫帰る
にはとりも猫も汚るる十二月
猫鳴いて枯木日和となりにけり
大寒の針ともならぬ猫の髭
水仙の寺や子猫の糞ひとつ (まり)
猫を抱き少年うたた寝初めかな


(了)