大木あまり詩画集「風を聴く木」『3-夜』
夜
あなたは
黒が似合う
美しい孤児。
あなたとわたしは
よく似ている。
愛と嘘が似ているように。
あなたが存在するかぎり
わたしに人生の鏡はいらない。
あなたに抱かれると
傷は癒え
愛がふたたび
あふれでる。
あなたの心を
しっかりセロハンで
包んでおきたいのに
瞬間がすぎると (とき)
透明な悲しみを
通り抜け
この呪わしい
遊星を
横切って行ってしまう。
わたしに
愛の毒を吹き込み
罪の甘美さを教え
恋という熱病を
残して。
あなたは
夜という
美しい孤児。