大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P16

 眠たやさ寒禽和紙の微音して


 眠気を催すとか、睡魔に襲われる、という経験はあまりない。不眠症なのでいつもぼっとしているが、ぼっとと眠気とは違う。せめて俳句に詠んでみたかった。
 雀や野鳥の飛ぶときの音は、和紙をこすったときの音がする。ことに、寒気のため全身の羽毛をふくらませた雀が飛ぶときは「和紙の微音」そのもの。一度でいいから上質な和紙に包まれて蚕のように眠ってみたい。 (『山の夢』)