大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P20

 栗の花置くここちして土用灸


 祖母の腰にお灸を据えるのが小学生の私の役目だった。色や形が乾いた栗の花のようなもぐさ。小さくちぎって丸めたもぐさを祖母の腰の上に五つほど並べ、線香の火を点じる。すると、燃えながら煙を立てるもぐさは小さな小さな狼煙をあげているように見えた。
〈いかなこと動ぜぬ婆々や土用灸 蛇笏〉を読むたびに、お灸の熱さを必死でこらえていた祖母を思い出す。 (『山の夢』)