大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P26

 式服の絹たよりなき秋つばめ


 友達の結婚式に出席するため、絹のドレスを着た私に母は「貴女はいつお嫁に行くの?」と聞いた。「そのうち、桂さんと結婚するかもよ」と冗談で好きな木の名前を言ったつもりが、母は桂という名の男性だと勘違いしてしまったのだ。女性の適齢期は、二十四歳なんて決めつける世間の常識と闘っている(?)末娘の気持も知らず、母はこの句を読んで「式服の絹が頼りないんじゃなくて、貴女が頼りないのよね」と笑った。 (『山の夢』)