大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P28

 枯れいろのなき淋しさや菊の武者


 菊人形は、菊の花や葉が萎れると菊師が新しいものを補充するのだろうか。いつ見ても白や黄や紅などの菊で美しく飾りつけされている。それは、菊細工であり見世物としての菊人形の宿命か。枯れることを許されない菊人形がさびしくも哀れである。
 この句の菊人形は、源義経と弁慶。義経の華麗さにくらべ白菊の多い弁慶は剛健な気風がよく表れていて、菊師の美意識と技量に感心した。 (『山の夢』)