大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P58

 郭公や少年の家は竹の中


 竹林の中に少年が住んでいた。彼が作った小屋には一匹の柴犬と二匹の黒猫。家族はそれだけだった。農家の手伝いをしながら自活する少年の唯一の楽しみは、化石のかけらをあつめること。疲れるとスティングのCD「セット・ゼム・フリー」を聞きながら少年は眠りにつく。竹の匂いの風が吹いていた。
 この句は、竹林で小屋を見つけたとき、あれこれ想像しながら作った。 (『火のいろに』)