大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P88

 枝炭の骨の音して山あかり


 二十年前のことだが、山里の情緒に富む寺家という所に、茶道で火を起こすのに使う枝炭をよく買いに行った。田園都市線青葉台駅からバスで十数分で行けるこの町は、炭を焼くことでも知られていた。ある日、炭屋に行ったとき、石灰や胡粉を塗った白炭(しろずみ)と塗らない山色(やまいろ)という枝炭を机の上に転がしてみた。両方とも、骨を転がしたらきっとこんな音がするのでは? と思わせるような厳かにも乾いた音。懐かしい音だった。 (『雲の塔』)