大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P92

  太陽や竹林といふ夏の檻


 人間関係や句作に疲れると、近くの竹林の精神科によく通ったものだ。竹林の中に、精神科があり、医師がいるわけではない。竹林そのものが私にとって精神科であり、そこを吹く風や黒揚羽や木漏れ日が医師だった。空へ真っ直ぐに伸びた何百本もの竹の檻の中にいると心身ともにリフレッシュする。そして、沈黙でいることの幸せを感じた。ひっそりと咲く山百合や小さな茸も沈黙の世界で息づいていた。太陽を感じながら……。 (『雲の塔』)