大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P94

 風船かづら禁欲のいろ極めけり


 風船蔓が、風船に似た薄緑の実をつぎつぎにつけるのを見て、この涼やかな若草色は禁欲の色だと直感した。そして、何かに耐えているような形から想を得てこの句はできた。
 俳人、石田いづみさんは、風船蔓がお好きだった。風船蔓の句を作って互いに見せ合う約束をしていたのに、いづみさんは急逝してしまわれた。今も形見の、ハート形の白斑が美しい風船蔓の種を大切にしている。封筒を振ると種の優しい音がする。 (『雲の塔』)