大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P98

 金閣をにらむ裸の翁かな


 急に金閣寺に行きたくなり、新横浜から新幹線に跳び乗って京都へ。金閣寺に着いたのは午後二時。うだるような暑さだった。眼前の金閣寺も水面に倒影したその姿も華美で趣があった。屋根の避雷針を発見して驚いていると大柄な老人が腕を組んで、金閣寺を凝視しているのが目に留った。しかも、上半身裸で半ズボン。面差しがヘミングウェイに似ていた。老人の、きっと睨む鋭い視線を受けとめて金閣寺は輝いていた。 (『雲の塔』)