大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P140

 弓のごとく桜の枝を持ち歩く


 増上寺で藺草慶子さんと吟行をしたときの作。その日、増上寺の境内を歩いていると植木職人たちが桜の枝を剪っていた。落ちてくる枝には花や蕾が沢山ついている。拾った一本の枝を弓のように持ち歩く慶子さん。弓場へと向かう姫君然とした容姿だった。同時作〈花屑を蛍のやうにつかまへて〉も慶子さんがモデル。凛々しさと清雅を合せ持つ姫君なのである。 (『火球』)