大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P142

 流感は古き浮巣を踏むここち


 流行性感冒になったとき高熱にうかされ、古い浮巣を踏んでいる心地になった。
 もうろうとした意識の中のあの異状感はなぜ? と今でも疑問を抱くが、兼題で「流感」が出たので、あまり深く考えずに、あるがあままを詠んでしまった。作句方法の善し悪しはともかく、どうやら、私が意識していない心的領域に古い浮巣は棲みついているらしい。 (『火球』)