大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P144

 亡き人にあたらぬやうに豆を撒く


 母が亡くなったのは、平成十年の十二月二十日。まだ悲しみを引きずっていてその年の節分の豆撒きをやめようと思っていた。が、知人のTさんが我が家の分まで年の豆を用意してくれたのだ。御好意を無にしないように撒くことにした。いざ、豆を摑んだとき、母の魂がすぐ近くに居るような感じがして、当たらないように、庭の闇へと豆を撒いた。夜空を仰ぐと星が点々と輝いていた。 (『火球』)