大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P146

 淡々と出て茗荷の子ゆるぎなし


 茗荷は夏になると根元から別の新しい茎を伸ばし先端に花穂を出す。この若い花穂が茗荷の子。土から淡々と顔をのぞかせているので掘るのが簡単と思いきや意外に手強い。地下の根茎がしっかりと支えているからだろう。
 笊いっぱいの茗荷の子を洗うときなぜか切なくなる。それは、赤ちゃんの手を握ったときの少し湿った肌触りに、茗荷の子が似ているからかもしれない。 (『火球』)